2015年11月27日金曜日

【トゥルー・クライム系番組】Deadly Womenで、同性の腹黒い面におののく。

 凶悪事件を起こした英語圏での実在の女性の殺人犯に特化したトゥルー・クライム番組です。

 元FBIプロファイラーのキャンディス・デロン氏(あのユナボマー事件の捜査も担当したそう)と元検死官ジャニス・アマトゥジオ氏がレギュラー出演し、再現ドラマの合間に、それぞれ心理学面・医学面から事件や犯人等についてコメントします。

 早期クールでは“A Crime to Remenber”ほど凝ってはいないが、初見の事件もあり、19世紀~1980年代くらいまでの事件が満載で興味深く観ておりました。

 ちなみに初期の頃は、経費削減のためプロの役者を雇わず、プロダクションのスタッフを再現ドラマに起用したという裏話もあります(YouTubeで公式チャンネルの中の人がコメントしているので間違いないかと)。

 ノンネイティブ故、私自身は演技のよしあしはよくわかりませんが、「あ~やっぱり。何かぎこちない演技の女優がいると思ったんだよね~」というコメントもちらほらあるのでわかる人にはわかるのかな。


 最近はネタ切れなのか、90年代やここ10年に発生した事件(しかもただ単に捨て鉢なだけのDQN率高し)が多くなってしまったのが惜しい。

 そんな中、個人的に記憶に残るエピソードがSeason 3第11話"Born Bad"。

 「人は育った環境等理由があって悪に染まる」と常々主張するデロンが「こいつらは生まれついての悪人だ」と評する咎人が揃っているという点でも珍しいと言えます。

 まずは1人目のガートルード・バニシェフスキーの場合。


 一言では「生まれついての悪人が嫉妬をかきたてられたときに起る悲劇」と言えましょうか。1965年、インディアナポリスにおいて、お金目当てに引き取った少女に対する家族ぐるみでの集団暴行・殺害を指揮した主犯とされた女性です。検察側は「インディアナ州で起こった最も凶悪な事件」と非難しています。

 ガートルードは、子供手当とアイロン仕事で生計を立てていたシングルマザーとして登場します。生活に疲れた様子が、洗濯物につばをぶっかける仕草からぷんぷん漂います。

 ある日、子供たちが旅芸人を親に持つのライケンス姉妹を自宅に連れて来ます。純情可憐な表情が印象的(綾波レイを人懐っこくした感じの子役ちゃん。実際のシルビアも可愛い普通の女の子という感じ。)な姉シルビアと、ポリオの後遺症で足に障害を持つ妹ジェニーが泊まりにやってきたのです。

 姉妹は両親の巡業ゆえに引っ越しを繰り返さざるを得ず、身内を含めあちこちの家庭を転々とする生活を送っていました。

 お金に目がくらんだガートルードは、後日姉妹を引き取りに来た父親を丸め込み、週20ドルの報酬を条件に「お嬢さんたちをきちんとしつけて育て上げる」と申し出ます。

 ガートルードによる姉妹への虐待が始まったのはその20ドルの支払い遅延がきっかけでした。

 しかし、デロン氏が「子供が複数いるにもかかわらず、虐待する側はたった1人の被害者を選び出すのは児童虐待ではよくあること」というように、矛先はシルビアへと絞られてしまいます。

 盗み食い、売春等あることないこと言い立てられた後、シルビアは地下室へ監禁されガートルードとのその娘たち、彼女らの男友達、そればかりかジェニーからも凄惨な暴力行為を受けることとなります。

 当然、食事も入浴も許されず、シルビアは衰弱していきます。再現ドラマも十分陰惨(やたら不潔に見えるセッティング)ですが、実際はもっとひどかったそうです。詳しくはウィキペディアでも読めます。しかし、この手の事件では珍しいことに、ガートルードがシルビアを淫売=性病持ちと吹き込んだためか、男どもは感染を恐れ、強姦は発生しなかったとのこと。

 極め付けは、シルビアの腹部に刻印されたとあるメッセージ。ガートルードは泣きわめくシルビアの腹部に「あたしはヤリマン。それが自慢。」という趣旨の文章を、熱した安全ピンで刻み付けていきます。

 この時点で彼女はシルビア殺害を決意していた、とデロン氏は分析しています。

 引き取られてから3か月後の10月末、シルビアは絶命してしまいます。アマトゥジオ氏は「栄養失調、感染症による免疫機能低下。それに伴う鬱病が彼女から生きる意志を奪った」と、医学的視点から解説しますが、文献によればそれに加えて脳出血、やけど、打撲、筋肉および神経損傷が直接的死因とされているようです。

 デロン氏は「嫉妬は、虐待や殺人の動機として一般的である。美貌、清廉性、処女性…ガートルードがとうの昔に喪失したものをシルビアは兼ね備えていた。ガートルードは嫉妬していたのだろう。そうしてシルビアを貶め、人生に対するストレスや怒りのはけ口として利用したのである。」と、述べています。

 遺体を前にパニック状態になったガートルードは警察に通報。そこからジェニーの反撃が始まり、全貌を語ることでガートルードらの逮捕に至ります。ただ、無期懲役と判決されながらも20年で模範囚としてガートルードが仮釈放を許されたことには後味の悪さを感じます。

 ただ…この事件は姉妹の父親も悪いと、個人的には思います。巡業で娘たちを連れていけないという事情は理解できるも、他人を信用しすぎ、善意を期待しすぎで社会を知らない成人の典型って感じ。親として、社会人として不用心すぎ。かといって、ガートルードがシルビアを殺害する理由にはなりませんけどね。当然のことながら。

 お次は3人目のシャロン・キンニーの場合。彼女については「生まれついての悪人が身の丈に合わぬ夢を抱いたことによる悲劇」といえるかもしれません。デロン氏は彼女を「社会病質者」と説明しています。

 シャロンの物語は、1969年、メキシコの刑務所でブライト・ノア似の女囚が女看守と談笑する場面から始まります。




 他の女囚や看守からも「ラ・ピストレーラ(女ピストル魔)」と、一目置かれる彼女こそがシャロン・キンニー。メキシコで恋人を殺害した罪で服役中の身です。「バーン!」と拳銃を打つ仕草で女囚をびびらせる仕草がコケット。

 実は彼女にとってこれは3回目の殺人で、1960年には米国で2件の殺人をおかしています。その頃のシャロンは、表向きはミズーリ州の郊外在住の平凡な二十歳の主婦。しかし、内心では結婚生活への失望でいっぱいで、サンダーバードや豪華旅行の雑誌広告を眺めながらため息をつく毎日を送っていました。動画スクショは、彼女による派手な生活の妄想の一コマです。

 作家ジム・ヘイズ氏曰く「閉塞感溢れる地元からさらってくれる白馬の王子様を求めて結婚したようなもの」でしたが、信心深い大学生の夫はその王子様からは程遠い存在だったようです。育児そっちのけで借金漬けになりながら贅沢三昧の生活を送るシャロンと夫との関係は次第に悪化していきます。

 この結婚生活にピリオドを打つべく、ある日、シャロンは昼寝中だった夫を射殺。




 しかも、当時2歳だった娘を下手人として仕立て上げるのです(おもちゃ感覚で銃をいじっていた娘が誤射した、という論理)。指紋でわからないのか、と思ってしまいますが、ナレーターのリンアン・ゼイガーはさらっと「銃が油まみれだったので指紋は検出されませんでした。警察はいぶかりながらもシャロンの訴えを聞き入れるしかありませんでした。」と、流しています。

 未亡人となったシャロンは莫大な保険金の他、新恋人を手に入れます。恋人は自動車セールスマンで既婚者のウォルターという男性でした。(おそらく虚偽の)妊娠を盾に離婚を迫るも煮え切らないウォルターへの嫌がらせとして、シャロンは第2の殺人に手を染めます。ウォルターの妻を郊外へ連れ出し、射殺するのです。さすがにこの件では逮捕されますが、凶器が見つからないということで無罪放免に。それからは地元のマフィアと行動を共にし、不渡小切手に関連する犯罪に関与したのちメキシコへ高飛びします。そこで出会ったオルドニェスという男性から帰国するための軍資金を盗むつもりが殺害してしまい、懲役10年を言い渡され、冒頭シーンへつながるというわけです。

 シャロンはその後どうなったか。再現ドラマは、袖の下を渡された女看守が牢獄の鍵を開け、不敵な笑みを浮かべたシャロンが脱獄するシーンで終わっています。




 つまり、わいろと引き換えに自由を手に入れたということです。

 何が怖いって、そのまま彼女の行方は杳として知れず、いまだ逃亡中の身だということ。前述のヘイズ氏は、女ピストル魔はまだ生きている、と考えているそうです。

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