2015年11月27日金曜日

【トゥルー・クライム系番組】A Crime to Rememberで50年代~70年代米国の世相をかじる。

・・・月初はForensic FilesとFBI Filesまで書いていた。

 つい最近、時代を感じさせるトゥルー・クライム系番組を動画サイトで見つけたので記録しておきたい。

 その名も"A Crime to Remember"。自然科学系チャンネルDiscovery Channel擁するDiscovery Communications社が放つ、トゥルー・クライム系の番組である。トゥルー・クライム系番組のエキストラさんによれば、この番組が所属するInvestigation Discoveryは、犯罪系チャンネルでは大手らしい。





 公開されている今までのエピソードを観たところ、50年代~70年代の事件を中心にカバーされている。しかも、『逃亡者』のモデルとなった事件以外は、ジョン・ゲイシー、アルバート・デサルヴォ、エド・ゲインほど世界中に知られている凶悪犯が関与した事件ではなく、兇悪ながら地元新聞の3面記事でしか見られないような、ある意味、マイナーな事件づくし。

 特筆すべきは小道具による演出。

 衣装、髪型、自動車、日常のアイテム、喋り方や表現が時代をかなり忠実に反映している。終盤では実際の被害者・加害者双方の画像が役者とオーバーラップするシーンがあるが、再現性の高さにびっくりする(役者の方がややきれい目だけど)。低予算と思しき(涙)Forensic FilesやFBI Filesとは全く違うレベルのお金のかけ方が画面から伝わってくる。

 フィクションではあるが、これまた事件発生時の時代の風俗を細かく演出に使う刑事モノ『コールド・ケース~迷宮事件簿~』が好きな人ならおそらく気に入るであろう構成となっている。

 つい最近までtvkでオンエアされていたね。エンディング間近になって、事件解決後、被害者が身内や主人公の女刑事に微笑みながら成仏する(?)シーンは一種のカタルシス効果がある。

 加えていうと、A Crime to RememberではFBI FILES同様当時の映像を随所に挟み込んでいるので、ニュース映画を観賞する感覚で知的好奇心が刺激される。

 この番組は、古き良き時代を震撼させた事件を選ぶ傾向にあり、根底にあるテーマは、「米国社会が純情を失うとき」といえようか。しかし、単に昔はよかったという安直なレトロ趣味へのこだわりはなく、新しい価値観の萌芽を予感させる背景も浮き彫りにしている。例えば70年代のNYCで発生した「ローズアン・クイン殺害事件」(下の動画、"Last Night Stand"とのタイトルでオンエア)では、都会で自活しており性的に奔放な女性が被害者である。当時の自立した女性の出現と、それまでの「女は結婚までは純潔を守って実家暮らし、せめて寮で生活するもの」という旧式な価値観のせめぎあいがにじみ出ており、いわば「翔んでる女性なんだから殺されても仕方ないよね」と描きたがる目撃者・マスコミへの反発心が、同じく都会で働く語り部の女性のナレーションから感じ取れる。


この語り部という構成がForensic FilesやFBI Filesとは異なる構成で、新鮮である。もちろん架空の人物という設定だが、だいたいが被害者の顔見知りだったり、同僚であったり、はたまた事件を追うジャーナリストであったり、と手を変え品を変え様々な立場で事件が語られる。

 ちなみにこの事件は、ダイアン・キートン主演の『ミスター・グッドバーを探して』のモデルになったそうだ。リチャード・ギアやトム・ベレンジャーの出世作としても知られている。



  同番組で他にも非常に興味深かったのが、シーズン1第4話のユナイテッド航空629便爆破事件をモチーフにした"Time Bomb"。

「共感の欠如」を特徴とし、数十年後に米国で跋扈するサイコパスのプロトタイプとして加害者が描かれている。
また、番組終盤に検察官が指摘するように、いわゆる「空の安全」を問い直し、法改正の契機となった事件として描かれている。

【事件概要】
 1955年11月、デンバー発の旅客機が飛行中に爆破されるという事件が発生し、乗員・乗客44名が全員死亡。

 折しも航空会社の労働争議がかまびすしい時代であり、労使紛争との関連性も疑われた(同じころ日本でも鉄道の労働争議があったわけでその連動性が興味深い)。

 同時に航空事故の保険金目当ての可能性もあったためFBIは組合と乗客の身辺調査を開始する。

 一方、事故調査の担当者たちが飛行機の残骸を集めていた際、ある搭乗者のスーツケースから火薬とワイヤーの残骸が発見される。

 搭乗者の名はデイジー・キング。デンバー在住者で、アラスカに住む娘一家を訪問するところだったという。

 事故後、同居の息子ジャックに聞き込みしたところ、戦前の大恐慌に翻弄された親子像が浮かび上がる。1930年代、夫に先立たれたデイジーは2人の子供を孤児院等に入れて働かざるをえなかったという。

 不況がデイジーの心をゆがませたのか。大恐慌が終わってもデイジーは子供たちとは疎遠であったようだ。翻って、子供たちは、性格がきつかった生前のデイジーを持て余していた節があった。

 更に身辺調査を進めると、戦後、家庭を持ったジャックに急接近したデイジーはジャックとドライブインを開店したという。

 そのドライブインには以前不審な爆破事故によって多額の保険金が支払われたこと、ジャックには小切手詐欺や酒の不法輸送の前科がついていたことが発覚する。

 また、デイジーとドライブインを共同経営していたジャックは、店の財政をめぐって上司ともいえる実母との口論が絶えなかったとの証言が店員たちから得られた。

 FBIがジャックをホシとみなすきっかけとなったのは、2つの要素であった。

 1つは、ジャックがデイジーのために空港で購入した航空事故保険で、現在価値で30万ドル強がかけられていた。
(ちなみに50年代~80年代まで、米国では空港内の自動販売機で航空事故保険が買えたそうで驚き!この番組で初めて知った!購入シーンも番組内に搭乗している!)

 もう1つは、ジャックの妻の証言。そういえば、とふと聞き込みの捜査官に彼女は伝える。空港までの車を出す間際になって、ジャックはスーツケースに「クリスマスプレゼント」と思しき箱を詰めたというのだ。

 「やっぱり親子だものね」。妻としてはジャックのやさしさを伝えたかったのだろうが、これを聞いた捜査官は色めき立ち、家宅捜索を開始。物的証拠と自白により、ジャックの逮捕に至った。一義的な動機はやはり保険金とされている。

 実はその当時、連邦法には旅客機爆破に関する刑法が定められていなかった。このため、デイジーへの殺人罪のみが立件されることとなったが判決からガス室による死刑までは14か月、と非常に短い。収監中、ジャックが自殺未遂を図った事情もあるが、FBIや検察、航空会社の厳しい姿勢を感じ取ることができる。母親を殺したことについては悔恨の念を表した一方で、残りの43名の殺害については何ら同情の意を示さないジャックの態度を考えると当然のことではあるが。

【トゥルー・クライム系番組】Deadly Womenで、同性の腹黒い面におののく。

 凶悪事件を起こした英語圏での実在の女性の殺人犯に特化したトゥルー・クライム番組です。

 元FBIプロファイラーのキャンディス・デロン氏(あのユナボマー事件の捜査も担当したそう)と元検死官ジャニス・アマトゥジオ氏がレギュラー出演し、再現ドラマの合間に、それぞれ心理学面・医学面から事件や犯人等についてコメントします。

 早期クールでは“A Crime to Remenber”ほど凝ってはいないが、初見の事件もあり、19世紀~1980年代くらいまでの事件が満載で興味深く観ておりました。

 ちなみに初期の頃は、経費削減のためプロの役者を雇わず、プロダクションのスタッフを再現ドラマに起用したという裏話もあります(YouTubeで公式チャンネルの中の人がコメントしているので間違いないかと)。

 ノンネイティブ故、私自身は演技のよしあしはよくわかりませんが、「あ~やっぱり。何かぎこちない演技の女優がいると思ったんだよね~」というコメントもちらほらあるのでわかる人にはわかるのかな。


 最近はネタ切れなのか、90年代やここ10年に発生した事件(しかもただ単に捨て鉢なだけのDQN率高し)が多くなってしまったのが惜しい。

 そんな中、個人的に記憶に残るエピソードがSeason 3第11話"Born Bad"。

 「人は育った環境等理由があって悪に染まる」と常々主張するデロンが「こいつらは生まれついての悪人だ」と評する咎人が揃っているという点でも珍しいと言えます。

 まずは1人目のガートルード・バニシェフスキーの場合。


 一言では「生まれついての悪人が嫉妬をかきたてられたときに起る悲劇」と言えましょうか。1965年、インディアナポリスにおいて、お金目当てに引き取った少女に対する家族ぐるみでの集団暴行・殺害を指揮した主犯とされた女性です。検察側は「インディアナ州で起こった最も凶悪な事件」と非難しています。

 ガートルードは、子供手当とアイロン仕事で生計を立てていたシングルマザーとして登場します。生活に疲れた様子が、洗濯物につばをぶっかける仕草からぷんぷん漂います。

 ある日、子供たちが旅芸人を親に持つのライケンス姉妹を自宅に連れて来ます。純情可憐な表情が印象的(綾波レイを人懐っこくした感じの子役ちゃん。実際のシルビアも可愛い普通の女の子という感じ。)な姉シルビアと、ポリオの後遺症で足に障害を持つ妹ジェニーが泊まりにやってきたのです。

 姉妹は両親の巡業ゆえに引っ越しを繰り返さざるを得ず、身内を含めあちこちの家庭を転々とする生活を送っていました。

 お金に目がくらんだガートルードは、後日姉妹を引き取りに来た父親を丸め込み、週20ドルの報酬を条件に「お嬢さんたちをきちんとしつけて育て上げる」と申し出ます。

 ガートルードによる姉妹への虐待が始まったのはその20ドルの支払い遅延がきっかけでした。

 しかし、デロン氏が「子供が複数いるにもかかわらず、虐待する側はたった1人の被害者を選び出すのは児童虐待ではよくあること」というように、矛先はシルビアへと絞られてしまいます。

 盗み食い、売春等あることないこと言い立てられた後、シルビアは地下室へ監禁されガートルードとのその娘たち、彼女らの男友達、そればかりかジェニーからも凄惨な暴力行為を受けることとなります。

 当然、食事も入浴も許されず、シルビアは衰弱していきます。再現ドラマも十分陰惨(やたら不潔に見えるセッティング)ですが、実際はもっとひどかったそうです。詳しくはウィキペディアでも読めます。しかし、この手の事件では珍しいことに、ガートルードがシルビアを淫売=性病持ちと吹き込んだためか、男どもは感染を恐れ、強姦は発生しなかったとのこと。

 極め付けは、シルビアの腹部に刻印されたとあるメッセージ。ガートルードは泣きわめくシルビアの腹部に「あたしはヤリマン。それが自慢。」という趣旨の文章を、熱した安全ピンで刻み付けていきます。

 この時点で彼女はシルビア殺害を決意していた、とデロン氏は分析しています。

 引き取られてから3か月後の10月末、シルビアは絶命してしまいます。アマトゥジオ氏は「栄養失調、感染症による免疫機能低下。それに伴う鬱病が彼女から生きる意志を奪った」と、医学的視点から解説しますが、文献によればそれに加えて脳出血、やけど、打撲、筋肉および神経損傷が直接的死因とされているようです。

 デロン氏は「嫉妬は、虐待や殺人の動機として一般的である。美貌、清廉性、処女性…ガートルードがとうの昔に喪失したものをシルビアは兼ね備えていた。ガートルードは嫉妬していたのだろう。そうしてシルビアを貶め、人生に対するストレスや怒りのはけ口として利用したのである。」と、述べています。

 遺体を前にパニック状態になったガートルードは警察に通報。そこからジェニーの反撃が始まり、全貌を語ることでガートルードらの逮捕に至ります。ただ、無期懲役と判決されながらも20年で模範囚としてガートルードが仮釈放を許されたことには後味の悪さを感じます。

 ただ…この事件は姉妹の父親も悪いと、個人的には思います。巡業で娘たちを連れていけないという事情は理解できるも、他人を信用しすぎ、善意を期待しすぎで社会を知らない成人の典型って感じ。親として、社会人として不用心すぎ。かといって、ガートルードがシルビアを殺害する理由にはなりませんけどね。当然のことながら。

 お次は3人目のシャロン・キンニーの場合。彼女については「生まれついての悪人が身の丈に合わぬ夢を抱いたことによる悲劇」といえるかもしれません。デロン氏は彼女を「社会病質者」と説明しています。

 シャロンの物語は、1969年、メキシコの刑務所でブライト・ノア似の女囚が女看守と談笑する場面から始まります。




 他の女囚や看守からも「ラ・ピストレーラ(女ピストル魔)」と、一目置かれる彼女こそがシャロン・キンニー。メキシコで恋人を殺害した罪で服役中の身です。「バーン!」と拳銃を打つ仕草で女囚をびびらせる仕草がコケット。

 実は彼女にとってこれは3回目の殺人で、1960年には米国で2件の殺人をおかしています。その頃のシャロンは、表向きはミズーリ州の郊外在住の平凡な二十歳の主婦。しかし、内心では結婚生活への失望でいっぱいで、サンダーバードや豪華旅行の雑誌広告を眺めながらため息をつく毎日を送っていました。動画スクショは、彼女による派手な生活の妄想の一コマです。

 作家ジム・ヘイズ氏曰く「閉塞感溢れる地元からさらってくれる白馬の王子様を求めて結婚したようなもの」でしたが、信心深い大学生の夫はその王子様からは程遠い存在だったようです。育児そっちのけで借金漬けになりながら贅沢三昧の生活を送るシャロンと夫との関係は次第に悪化していきます。

 この結婚生活にピリオドを打つべく、ある日、シャロンは昼寝中だった夫を射殺。




 しかも、当時2歳だった娘を下手人として仕立て上げるのです(おもちゃ感覚で銃をいじっていた娘が誤射した、という論理)。指紋でわからないのか、と思ってしまいますが、ナレーターのリンアン・ゼイガーはさらっと「銃が油まみれだったので指紋は検出されませんでした。警察はいぶかりながらもシャロンの訴えを聞き入れるしかありませんでした。」と、流しています。

 未亡人となったシャロンは莫大な保険金の他、新恋人を手に入れます。恋人は自動車セールスマンで既婚者のウォルターという男性でした。(おそらく虚偽の)妊娠を盾に離婚を迫るも煮え切らないウォルターへの嫌がらせとして、シャロンは第2の殺人に手を染めます。ウォルターの妻を郊外へ連れ出し、射殺するのです。さすがにこの件では逮捕されますが、凶器が見つからないということで無罪放免に。それからは地元のマフィアと行動を共にし、不渡小切手に関連する犯罪に関与したのちメキシコへ高飛びします。そこで出会ったオルドニェスという男性から帰国するための軍資金を盗むつもりが殺害してしまい、懲役10年を言い渡され、冒頭シーンへつながるというわけです。

 シャロンはその後どうなったか。再現ドラマは、袖の下を渡された女看守が牢獄の鍵を開け、不敵な笑みを浮かべたシャロンが脱獄するシーンで終わっています。




 つまり、わいろと引き換えに自由を手に入れたということです。

 何が怖いって、そのまま彼女の行方は杳として知れず、いまだ逃亡中の身だということ。前述のヘイズ氏は、女ピストル魔はまだ生きている、と考えているそうです。

2015年11月26日木曜日

【トゥルー・クライム系番組】Forensic FileとFBI Filesで科学の力とFBIの力を実感する(前半は自分語り)。

 飽きっぽいのは私の習性。
 人の意見に流されやすいのも私の習性。
 さすがに30代になってからは誰それが好きって言ってたから~嫌いって言ってたから~に振り回されることはあまりなくなったけど。

 そんなわけで飽きずに好きでいて、かつ他人にどう言われようとも揺るがないツボを探ってみた。

 それで。YouTubeを巡回しながら、ヨガやフィットネス以外にも飽きずに好きなものがあったことに気づいた。

 それは、事件・犯罪・法医学。いわゆるトゥルー・クライム。

 去年までは検死官が主人公の米国ドラマ『ボディ・オブ・プルーフ』にはまっていた。でも、不人気で打ち切りになっちゃった。主演のダナ・ディレイニー(ハント検死官役)はかっこいい40代女性、という設定で気に入っていたのにな。説教くさくて手垢のついた演出がたまに鼻についたことは否めないが。だいたいドラマは複雑な人間関係等挟み込むのが蛇足なんだよな~…と海外ドラマにもやや辟易していた昨今であった。刑事ドラマの人間関係の描写が好きな人ってどれくらいいるのだろう…個人的には必要ないかな…と思っている…

 そこで思い出したのが、海外滞在中に観ていたトゥルー・クライム系番組。だいたい海外に行くと熱中していた(現地の電話帳を読むことにも)。単身赴任中の父親の元へ遊びに行ったとき、全然TVの前から動かない私に父がいらついたこともあったっけ。

 米国東海岸滞在中にForensic Filesという科学捜査番組に没頭していたのを思い出した。

 1996年から続くご長寿番組で、科学捜査によって解決した全米の事件を1話構成で紹介している。

 様々な英語圏のトゥルー・クライム系番組の中でもナレーターを務めるPeter Thomas氏の語り口がもっとも聞き取りやすいので、ノンネイティブもお勧め。聞きやすいだけではなく、抑え気味な声音が番組の雰囲気と好相性。1人で深夜に聞いていると、ちょっと怖くなるくらい。

 YouTubeを漁ってみたところ、FilmRiseという、シーズン開始の第1話からほぼ完全に網羅している配信会社に行き当たった。見つけたその日からほぼ毎日閲覧している。

 似たような犯罪系・法医学系TV番組でFBI Filesという番組も配信しているため閲覧したところ、いずれもとある誘拐殺人事件を共通してフィーチャーしていたので、両番組の簡単な比較検討を行いたいと思う。


【事件概要】1994年クリスマス間近、ペンシルベニア州の小さな町で、ジョアン・カトリナックという女性と3か月の息子アレックスが自宅を出たきり行方知れずに。

 ジョアンはその日、息子を連れて義母とショッピングモールで落ち合う予定であった。

 不審に思った夫アンディが通報したところ、地下室のドアが開いていた上、電話線が切られているのに気づく。

 その後、ジョアンの車が100ヤード離れた場所で発見される。鑑識班はこのとき、車内からブロンドの髪を取りだしている。

 翌年4月、母子の遺体がトウモロコシ畑で発見された。ジョアンはマザーバッグを肩にかけたまま殴られた後、射殺されていることに加え、アレックスの遺体は彼女のお腹の上に置かれた状態だった。

 犯人がアンディの元恋人パトリシア・ローラーであることを突き止めたのは、通話記録、自宅への侵入経路の他毛髪であった。

 刑事は聞き込みから事件前後のローラーの髪の色を調べ上げ、科学捜査班は毛髪のミトコンドリアDNAを用いることで犯人特定に至った。

 なお、犯行当時、パトリシアは妊婦であり、出産から間もなく逮捕された。

 この事件は、ミトコンドリアDNAを用いて犯人逮捕に至った全米3番目の事例だそう。

【Forensic Files(以下FF)とFBI Files(以下FB)比較】
●構成
 FF:被害者の関係者やマスコミ関係者へのインタビューが多め。だいたい冒頭とエンディングにインタビューシーンが流れる。
 FB:捜査関係者のインタビューに時間が割かれている。また、FFより尺が長いため(FF約21分、FB約60分)再現ドラマにお金と時間がかかっている印象。

 本件では、FFになかった再現ドラマで、逮捕時、パトリシアが生まれたばかりの我が子に「捕まるとわかっていたら、お前を産んだりしなかったのに」と嘆き、それを自白(の一部)として取ったという捜査関係者の証言がある。再現ドラマによるショッキング度合はFFより高め。

●捜査
 FF:このケースでは、車内から検出した毛髪のミトコンドリアDNA以外にも、法医昆虫学者が遺体についたハエの孵化・成長状態も参考に死亡時刻を確定したことに言及。

 別エピソードではあるが、FBIのプロファイリングや目撃証言にはない人物を科学捜査で検挙する事例が紹介されており、主観が入りがちな行動科学や証言といったツールに一石を投じるスタンスである。

 FB:このケースでは、ミトコンドリアDNAが逮捕につながったと述べる点ではFFと共通する一方、FFにあった法医昆虫学には触れず。

 また、「ラララ科学の子」なFFに比べると、番組全体のスタンスとしては主役はあくまでFBI捜査官であり、法医学関係者は脇役、といった立ち位置を取っているイメージ。聞き込みや尋問といった古典的な手法にもまんべんなく焦点を当てている。

 FBは科学捜査によって解決した事件に限定せず、その名の通り、FBIが担当した事件についてカバーしている。マフィアの親玉ジョン・ゴッティや公民権運動に絡んだミシシッピ−・バーニングといった古い事件もオンエアされるので、法医学に関心がなくとも過去の風俗や映像に興味ある人も楽しめる内容になっている。